新たな地質時代「チバニアン」命名に向け、研究グループが進めていた国際機関への申請ができない事態になっている。
反対する男性が、地層がある千葉県市原市の土地の賃借権をとり、申請に必須な「自由な立ち入りの証明」ができないためだ。
期限の9月までに提出できないと、国際機関の委員会は審査ができないまま解散、認定の機会を失う。
研究グループは「このままでは断念せざるを得ない。二度目のチャンスはない」と危機感を抱いている。

 地球は誕生以来、N極とS極の逆転を繰り返してきた。市原市の養老川沿いにある地層「千葉セクション」は、
最後に逆転した77万年前の痕跡が確認できる希少な地層とされる。研究グループは、日本初の国際標準模式地(GSSP)への
認定を目指し、科学的価値を審査する国際地質科学連合の委員会が審査している。
4段階の審査を経て、認められれば77万〜12万6千年前の地質時代が「チバニアン(千葉時代)」と名づけられることから関心を集めていた。

 イタリアにも二つの候補地があったが、2017年11月、GSSPの1次審査で千葉セクションが残った。
昨年11月に2次を通過、科学的価値が確認された。3次では各国の研究者が、試料採取など研究活動ができる場所
であることを証明しなければならないため、市原市は、公有地化と国の天然記念物指定に乗り出した。

 市は、指定地域の2万8500平方メートルのうち民有地2万2500平方メートル(所有者26人)の買収交渉を開始。
地磁気逆転が確認できる最も重要な部分155平方メートルも、所有者が昨年5月に市への譲渡を約束する署名をしていた。
研究グループは市から「土地利用証明書」を受け取り、審査委に提出する予定だった。

https://www.asahi.com/articles/ASM5T56N0M5TUTIL016.html

https://www.asahicom.jp/articles/images/c_AS20190525002414_comm.jpg
養老川沿いに広がる地層「千葉セクション」。磁場が逆転した痕跡を見に来る人たちは絶えない。一方で、現場には、申請に反対する「古関東深海盆ジオパーク推進協議会」が看板を貼り付けている=2019年4月11日午後0時37分、千葉県市原市田淵、中山由美撮影