F35墜落で始まった日米vs中ロ「海中の攻防」
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43660110S9A410C1I10000/

航空自衛隊が導入した初のステルス戦闘機F35Aが4月9日、青森県沖の太平洋上で
訓練中に墜落した。自衛隊と米軍による捜索活動が続いているが、
墜落機と搭乗員の発見には至っていない。次世代の航空戦を左右する
先進技術の固まりでもある機体には、中国やロシアが触手を伸ばしてくるおそれがあり、
過去の戦闘機の墜落事故とは大きく異なる緊張感が漂う事態になりつつある。

三菱重工業の小牧南工場で完成した「国内組み立て」初号機だったF35Aの機影が
空自レーダーから消えて間もない9日夜、在日米軍はただちに自衛隊による
捜索活動に協力すべく動き出した。日米が共同使用する三沢基地からは、
P8A哨戒機を発進させたほか、横須賀基地を拠点とするイージス駆逐艦
ステザムを現場海域に派遣した。グアム島アンダーセン基地から
B52戦略爆撃機を現場海域まで飛ばしたとの情報もある。
米軍は、自衛隊と協力するとはいえ、今回のF35の事故ではなぜ、そこまで踏み込んだのか。(中略)

中国やロシアにとって最も望ましいのは、米軍が開発した実物を入手することであり、
中ロの軍や情報当局が空自F35Aの墜落海域を注視していることは想像に難くない。
米軍が今回、墜落海域に戦略爆撃機B52を派遣するという異例の反応を示したのは、
「墜落機体を中ロが奪うことは絶対に許さない」との強い決意を示すためだったようだ。(中略)

今回墜落した空自のF35Aは墜落海域の深度約1500メートルの海底のどこかにあると推測されている。
容易ではないだろうが、引き揚げが不可能な深さでもない。
墜落海域は青森の沖合約150キロメートルと、日本の排他的経済水域(EEZ)の内部で、
中国やロシアがCIAがしたように資源探査などを名目に墜落機体の捜索や引き揚げ作業を
日本に無断ですることはできない。ただ、中国軍やロシア軍が潜水艦や無人潜航艇などを
繰り出して、機体の入手を試みる可能性が皆無とはいえない。