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 しかも、韓国側代表が日本に示した請求の概要を見れば明らかなとおり、「この交渉には、戦争犯罪や、
人道に対する罪、奴隷条約の違反、女性売買禁止条約の違反、さらに国際法の慣習的規範の違反に起
因する個人の権利侵害に関する部分はまったくない」(85)。日本は、その一方で西側諸国に対しては文書
ではっきりと謝罪し、個人の権利侵害への損害賠償支払いに同意しながら、韓国人に対しては同じことを
しなかった(86)。したがって、日韓協定第二条で使用される「請求権」という用語は、このような事実が背景
にあるという文脈で解釈しなくてはならない。日韓協定に基づいて日本が提供した資金は、明らかに経済
復興を目的としたものであり、日本による残虐行為の個々の被害者に対する損害賠償のためのものでは
ない。一九六五年の協定はすべてを包含するような文言を使用してはいるか、このように、二国間の経済
請求権と財産請求権のみを消滅させたものであり、個人の請求権は消滅していない。したがって日本は、
自己の行為に現在でも責任を負わねばならない(87)。

85 国際法律家委員会(本文注48)参照.
86 Hsu(前注23)p.103〜p.104参照.
87 Rarker and Chew (前注5)p.538, 国際法律家委員会(本文注48)p.164〜p.165参照.