仏、燃料税上げ1年凍結 「富裕税」再導入も浮上

フランスのマクロン大統領が進めてきた財政再建に黄信号がともった。
2019年1月に予定していた燃料税の引き上げを1年間は凍結する方針を表明し、
同年の財政赤字が想定より拡大する可能性が出てきたためだ。
目減りする歳入を穴埋めするため、政権内では18年1月に廃止したばかりの「富裕税」の再導入を模索する動きも浮上した。

仏財政の再建にブレーキがかかれば、欧州連合(EU)の財政ルールが揺らぐ可能性もある。
拡張型の19年予算案を作成したイタリアのポピュリズム(大衆迎合主義)色が強い政権を勢いづかせかねないためだ。
同国はこの予算案をEUの執行機関である欧州委員会に提出したが、赤字削減を強く求められている。

仏大統領府は5日、ガソリンと軽油に対する燃料税の引き上げを19年中は見送ると表明した。
4日にフィリップ首相が増税の6カ月延期を発表していたが、これでは、痛みを伴う政権の構造改革に不満を持ち、
11月中旬から土曜日ごとに仏各地で反政府デモを繰り返す市民らを抑えることができないと判断した。

仏メディアによると、燃料税の引き上げ凍結などで19年の歳入減は約40億ユーロ(約5100億円)にのぼるとみられる。
これは仏国内総生産(GDP)の0.2%に相当するため、19年の財政赤字はこれまで見込んできたGDP比2.8%から膨らみかねない。

EUのルールは加盟国に財政赤字をGDP比で3%以内に収めるよう求めている。
フィリップ氏は5日、仏国民議会(下院)での演説で「新しい税金は設けたくないが、次の世代に過剰な債務は残さない」と述べ、
財政再建を諦めない姿勢を明確にした。
仏国立統計経済研究所(INSEE)によると、同国の政府債務残高のGDP比は6月末現在で99%に達する。

燃料税の引き上げ凍結による税収不足の穴埋めとして浮上したのは、
一定額を超える保有資産(有価証券など含む)に課税する富裕税の復活だ。
仏政府のグリボー報道官(閣僚級)は
5日の仏ラジオで、富裕税の再導入を検討すると表明した。シアパ・男女平等問題担当副大臣も同日の声明でこれに同調した。


https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38632820W8A201C1FF2000/