>>56の続き

「客は愛の形として金を注ぐけど、ホストは金は金としか見ていない。追い込みをかけられた時にそれに気づいて、うつになったり自殺未遂を起こしたりするんだよね」。別の常連客の女性は言う。

 ◇負の連鎖

 歌舞伎町には200〜300のホストクラブが集まり、数千人のホストがいるとされる。
ここ20年で店の数は変わっていないが、同地に事務所を構える公益社団法人「日本駆け込み寺」のスタッフ、乾龍一さん(42)は「内実は大きく変わった」と話す。

 自身も15年ほど前までホストをしていた乾さんは「昔は女性経営者などの客が多かったが、不況のせいでそういう客は減った。
今は学生でも、会社員でも、とにかく客にして、広く薄く金を搾り取ろうという風潮が強くなりました」と話す。
日本駆け込み寺にはそんな女性たちからの相談も寄せられる。

 ただ乾さんは疲弊した業界において、ホストたちもまた追い込まれている、と感じる時があるという。

 「先日相談に来た北海道出身の21歳のホストは月給がマイナス2000円でした。支給された服の代金の返済や寮費、旅行の積み立て、わけのわからん天引き。
差し引いたらただ働き以下だったわけです。ここに来たとき、ほとんど何も食べてない日が続いて参っていました。うちに来たのは心療内科に紹介されたからです」

 テレビで見かけるような高級マンションに住み、スポーツカーを乗り回すホストは、ごく一握りに過ぎない。
ほとんどは体を壊すか、心を病むかして歌舞伎町を去っていく。客の掛けを回収できずに「飛ぶ(失踪する)」ケースも多い。

 「この街はおかしなっとるんや。ホストもホスト通いも自由やけど、甘い文句に釣られてこき使われるホストもある意味の被害者かもしれん。
その被害者が客を追い込み、新たな被害者を生む。それが今、この街で起きとることなんちゃうかな」。
日本駆け込み寺代表の玄秀盛さん(62)は言った。

 警視庁の捜査関係者によると、歌舞伎町では10月の1カ月間で少なくとも7件の飛び降り自殺や未遂騒ぎがあり、5人が死亡した。
いずれのケースも動機は明らかになっていないが、死者のうち3人は若い女性だった。