世界保健機関(WHO)がまとめた「飲酒関連の死亡者は世界で年300万人を超える」という報告書に世界の酒類大手が身構えている。
たばこと同様に、酒類でも増税や広告規制などを各国に求める可能性が高まることを警戒する。ビールの世界大手ではノンアルコール飲料を
増やす動きも出始めている。

WHOが9月に発表した報告書によると、2016年に飲酒関連で死亡した人は世界中の死亡者のうち、5.3%を占めた。2.8%の糖尿病を上回る。
報告書は多くの国で対策が必要と指摘。税金引き上げや広告の禁止や制限といった対策を講じるよう呼びかけた。

「たばこの次は酒か」。ある酒類大手首脳は警戒感を隠さない。

酒類業界でも適正飲酒に向けたビジネスの強化に動く。オランダのビール世界大手ハイネケンはノンアルビール「ハイネケン0.0」の販売を伸ばす。
17年に16カ国・地域だったが、現在は38カ国・地域に広げた。仏AFP通信によるとビール世界最大手のアンハイザー・ブッシュ・インベブ(ベルギー)は
ノンアルや低アルコールの売り上げを25年までにビール全体の5分の1に増やす計画だ。

アサヒグループホールディングスもノンアルビール「ドライゼロ」の海外投入を研究する。

海外の酒類業界では、事業の選択と集中を進める企業への投資家の評価が高く、ビールに集中するインベブやハイネケンといった
「一本足打法」の企業が多い。世界的な健康志向の強まりや好みが多様化するなか、世界の酒類業界は各社の戦略や産業構造の
見直しを迫られる可能性がある。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38038050R21C18A1TJ3000/