10月27日、米ペンシルベニア州ピッツバーグのユダヤ教礼拝所で銃撃事件が発生し、11人が死亡、6人が負傷した。
拘束されたロバート・バウアーズ容疑者は「ユダヤ人を皆殺しにしたかった」と供述しており、多数のユダヤ人の殺害を狙ったヘイトクライム(憎悪犯罪)と見られている。
ユダヤ人への差別思想が引き起こしたこの事件は、米国のみならず世界中を震撼(しんかん)させた。

 この事件を巡っては、容疑者が利用していたソーシャルメディア「ギャブ(Gab)」にも注目が集まっている。
容疑者は以前からギャブにユダヤ人差別的な投稿を度々繰り返し、犯行の数分前にもこんな予告を書き込んでいた。

「HIAS(ユダヤ系難民支援団体)は、我らが同胞を殺す侵略者を招き入れようとしている。同胞が虐殺されようとしているのを見過ごすわけにはいかない。なんと言われようと、やってやる」

 2016年8月に立ち上げられたギャブは、「言論の自由を保護する検閲のないソーシャルメディア」として急成長を遂げ、現在は80万人ものユーザーを抱えている。
だが、その実態は、ヘイトスピーチや暴力の扇動を理由にツイッターやフェイスブックを追放された白人至上主義者や反ユダヤ主義者、男性優越主義者らオルタナ右翼の「避難所」でしかなかった。
表現の自由を盾に、ヘイトスピーチを好き放題言える“極右のたまり場”として人気を集めていたのだ。

 銃撃犯が度々ヘイトスピーチを投稿していたことが報じられると、ギャブはすぐさま声明を発表。「テロリズムや暴力を一切容認しない」とした上で、容疑者のアカウントを凍結し、FBIに情報提供したことを明らかにした。



中略


 以前から米国ではヘイトスピーチも表現の自由に含まれると解釈され、見過ごされてきた。
トランプ大統領誕生以降、ヘイトスピーチが現実のヘイトクライムとして顕在化するようになり、テクノロジー企業も対応を強化せざるを得なくなっている。
間違いなく米国の「表現の自由」は曲がり角に来ているのだ。

※週刊朝日  2018年11月16日号


https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181107-00000010-sasahi-sci