(中略)
「航空自衛隊の維持整備は現状でも部品不足が累積し、借金まみれのような状態だ」。
昨年八月まで空自の補給本部長を務めた尾上定正氏は、現場の窮状を厳しい表情で明かした。

その一つに挙げたのが二百機を数える戦闘機F15。米企業とライセンス契約を結んだ
国内最大手の三菱重工業が生産し、修理を手掛ける主力戦闘機だ。領空侵犯の恐れがある、
他国の軍用機に対する緊急発進のほとんどを担うため、最優先で整備している。

しかし、そのF15ですら部品の在庫が乏しく、すぐに修理・整備できないケースが相次ぐ。
仕方なく、整備中のもう一機の部品を流用する「共食い整備」でやりくりしているという。

「部品を流用された機体は飛べなくなるから、F15の稼働率は大幅に落ちている」と尾上氏。
優先度の低い整備は後回しになりがちなため、将来のパイロットの育成に使う練習機「T4」などは、
故障すると倉庫に置かれたままにされるのが現状だ。

空自がFMSで導入する最新鋭戦闘機「F35A」で既に配備されたのは九機。
将来的に計四十二機に増える。「F35Aが増えるほど、それ以外の維持整備費は圧迫される。
極端に言えば、F35A以外の空自の飛行機は動かなくなる」と尾上氏は懸念する。

危機感は自衛隊全体に広がる。「自転車操業で運用上の問題は生じていないのか」。
昨年十二月に防衛省で開かれた調達審議会で、有識者の一人が海上自衛隊の
国産の哨戒ヘリコプター「SH60K」でも、いわゆる共食い整備が行われていると実態を取り上げた。

「運用に影響を及ぼしている部隊もある」。当事者の防衛省側がそう認めざるを得ないほど、
共食い整備の影響は深刻化している。

<税を追う>米国製優先、飛べぬ国産 整備部品足りず自転車操業
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018110202000144.html