「どんなに貧しい家庭に育った子供たちでも進学のチャンスを確保する」――。
そんな謳い文句で安倍政権が昨年打ち出したのが「大学無償化」だ。
6月15日に閣議決定されて2020年度から動き出すことが決まったが、じつは一部の専門家からは批判の声が出ている。
この制度が官邸主導が進められてきたことから、多くの課題が積み残しにされたまま
「無償化ありき」で議論が先行していることが背景にある。
例えば大学無償化というと「低所得世帯の授業料がタダになる」という話ばかりが強調されるが、
対象学生の「生活費」もタダになるということをご存じだろうか。
ほとんど注目されていないが、「無償化の途中解除問題」という新たな問題も浮上している。
果たして大学無償化は本当に誰もが輝ける社会への突破口なのか、
税金の無駄遣いに終わることはないのか――。ここで一度検証して見よう。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/56145

「その他の日常費」にしても、被服・帰省のための交通費、社会保険料などが入っており、
その多岐にわたる手厚い支援はまさに至れり尽くせりの感が否めない。
これでは「税金のバラマキ」と言われても仕方がない。
もちろん、国も無条件で授業料や生活費をタダにするわけではない。
高校段階の成績や学習意欲はもとより、大学進学後も1年間の必要取得単数の
6割以下しかとれない場合や、GPA(平均成績)などの成績が下位4分の1に属するときは、
大学等から警告されて、2年連続で警告を受けた場合は支給を打ち切られる。
退学や停学処分などを受けた場合も同じだ。
ただ、じつはその支給打ち切りが厳格に行われる保証はない。
ある政府関係者は、「いくら勉強に専念しても下位層から抜け出せる学生ばかりではない。
2年連続で学業不振に陥るケースも必ず出てくる。そのとき機械的に一律打ち切りを行えば、
政府や大学がバッシングを受けかねない」と悩ましさを語る。

非大卒組からは「なぜ遊んでばかりいる大学生だけが税金で優遇されるのか」といった
不公平感が高まりつつあるが、これにはどう答えるのか。
必要な制度であることは分かる。ただ、もう少し国民全体の議論が必要ではないだろうか。