■過去直視と未来志向
例えば3年前に政府間で合意した慰安婦問題がそうだ。
合意に基づき、日本政府の資金をもとに韓国政府が作った、元慰安婦らの支援にあたる財団は今、存続の危機にある。
韓国政府は合意の破棄を否定しつつも、前政権の失政だとして事実上の形骸化を図り、責任を果たそうとしない。日本政府も問題は「解決済み」の一点張りで、その硬直した姿勢が韓国側を刺激するという悪循環。
共同宣言の核心である「過去の直視」を日本が怠り、韓国が「未来志向の関係」を渇望しないのならば、いつまでたっても接点は見つからない。

日韓はさらに、核保有国を自任する北朝鮮とどう向き合うかという懸案にも直面している。
非核化という最終目標は共有している。だが、それをどう達成するかという考えは、日韓で大きく隔たる。早急に認識を詰める必要がある。
日韓関係を長年研究してきた小此木政夫・慶応大名誉教授は中国の台頭や日韓の国力の差の接近などを挙げ、「この20年で両国をとりまくシステムが大きく変化した。
地域の安定のためにも互いに不可欠なパートナーだと認識する必要性が、むしろ強まってきた」と指摘する。
だが現状はと言うと、首脳同士の定期往来であるシャトル外交に合意しながらも、軌道に乗る兆しが見えない。

■大局見据えた決断
シャトル外交の復活がそれほど難しいのであれば、共同宣言後に韓国の国務総理(首相)と日本の首相らが、格式張らない往来を重ねた閣僚懇談会からでも再開すべきではないか。
現在の韓国の首相は、日本通で言葉も堪能な李洛淵(イナギョン)氏。政治の対話チャンネルを機能させるため、双方があらゆる工夫をこらさねばならない。
後世に責任を持つ政治指導者として、大局を見据え、隣国との信を交わす。地域のリーダー国である日韓はどんな関係を築くべきなのか。国際社会で両国が担うべき役割は何か――。

20年前、日韓の首脳が自ら決断し、ともに歩み寄り、新時代を切り開こうとした意味は大きい。宣言の精神は少しも色あせてはいない。
https://www.asahi.com/articles/DA3S13714287.html