四万十川、相次ぐ死亡事故 危険を感じられない観光客
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四万十川で遊泳中に流される死亡事故が今夏も起きた。高知県外からの観光客にも人気の勝間沈下橋(四万十市)では、この5年間で5件の水難事故が発生している。観光名所で相次ぐ事故に地元の自治体も対応に頭を悩ませている。(加藤秀彬)

【写真】8月の水難事故を受け、勝間沈下橋に向かう道中には「遊泳注意」の看板が立てられた=2018年9月、高知県四万十市


■川に飛び込んで死亡

 四万十市の市街地から北西に国道441号を15キロほど車で走ると、勝間沈下橋が見えてくる。全長171・4メートル、幅4・4メートル。四万十川本流の下流から4本目の沈下橋だ。周辺の河原は広く水遊びがしやすい。映画「釣りバカ日誌」のロケ地に使われ、人気の観光スポットになっている。

 事故は8月26日に起きた。県内にある妻の実家に帰省していた埼玉県戸田市の会社員男性(24)は、親戚ら7人と遊泳に出かけた。男性は勝間沈下橋から何度も飛び込んでいたが、姿が見えなくなった。

 地元の消防が翌日、沈下橋から下流に100メートルほど離れた川底で男性を発見した。現場の水深約18メートル。男性はライフジャケットを着用していなかった。

 中村署によると、川は事故前日の降雨で増水してにごり、水中の視界は約1メートルだったという。捜索では県警のヘリコプターが現場付近を何度も往復したが、空中からは遺体を目視で見つけられなかった。
黒岩覚副署長は「水がにごっているときは、川の流れが普通じゃないことが多い。下流は大きな石がないから白波が立たないが、流れは見た目以上に速い」と話す。


■県外の人、危険感じず

 四万十消防署によると、四万十川では2013年以降、水難事故が10件あり、そのうち勝間沈下橋付近では5件発生した。勝間沈下橋で事故に遭った5人は県外からの観光客で、うち4人が死亡した。

 なぜ勝間沈下橋付近の事故が多いのか。四万十消防署の担当者は「下流の水深は18メートル以上ある。下流に流されると、水流の速い渦に巻き込まれて岸に戻れないことがある」と説明する。

 勝間沈下橋の近くに住む行政書士の伊与田順一さん(64)は「事故に遭う観光客は川とプールが同じ感覚なのではないか。地元の子は危険とわかっているから飛び込みません」と話す。

 事故後も勝間沈下橋ではカヌーで川下りをしたり、橋の上を歩いたりする観光客たちがいた。

 東京都渋谷区の大学生八代康佑さん(23)は「都会にはないきれいな川で、インスタ映えする」と写真を撮っていた。
橋では地元のトラック運転手から「飛び込んだら危ないよ」と声をかけられ、事故があったことを知った。八代さんは「飛び込みたくなるのもわかる。そんなに流されるなんて想像がつかない」。