>>15続き
そして第3には、今回の文書が新聞・通信社にのみ配布されている、と伝えられていることに対する危惧感である。
これまではもっぱら放送に対して強面(こわもて)態度を示してきたが、今回は「あえて」活字を対象としてきたことの意味を考えざるを得ない。
放送局は十分に目が行き届いているとの、自信の表れなのかもしれない。
さらに、公平要請はここ最近、もっぱら政権批判を許さないとほぼ同じ意味で使用されてきた。
その逆(政府支持の言動に対する偏向批判)は、ほぼ皆無であることからもわかる。

市民社会の中にも、こうした政府の態度に呼応して、政府批判のメディアを口汚く罵(ののし)る風潮が後を絶たない。
その攻撃対象として今回は、活字をターゲットにしてきたと言えるからだ。
その理由をあえて深読みするならば、憲法改正論議の中で、絶対的な「公平」報道を求め、事実上の批判を許さないという意味であろう。
放送には放送法がありいつでも物が言える立場にあるのに対し、新聞は憲法改正手続法においても射程外で、自由な報道を保障されている。
それに対して政党が強い懸念を持っていることの裏返しとも読めるからだ。

それからすると、いま報道機関は、政府・政権党によって、最終段階まで押し込められているとも言え、いかに跳ね返せるかが問われている。
まさかとは思うが、この県知事選でも「数量平等」の要請がないとは限らないからだ。

(山田健太 専修大学教授・言論法)

おしまい