15の夏の終わりに近所の神社で夜店に行った。人生で最初で最後の告白されての彼女だった。輪投げの景品に有った高級そうなブレスレットを取ってやろうと頑張ったけど隣の小さなチープな熊のマスコットの付いた髪止めしか撮れなかった。
またもっと良いの買ってやるから、って渡したら「これで嬉しい」って短めの髪のすそを縛ってはしゃいでた。それからもずっとデートの時に着けてたなあ。大事そうにしてくれてた。
参道の外れの石垣に座って二人でひとつのお好み焼きを食べた。ジュースも1本を二人で飲んだ。間接キッスとか笑ってたけどちょっとの沈黙の後に人目を気にしながらキスをした。その日初めて手を繋いでキスをして人生で最高に幸せで楽しい日々をすごした。
翌年の祭りは一人だった。一人でお参りしてお好み焼きを食ってぼんやり人波を見てた。それから社会人になるまでずっとその祭りには一人で行った。
髪止めだけは持って。人生で最高に幸せで楽しい日々と嬉しそうな笑顔と柔らかな唇の思い出一緒に。
あの冬、塾に向かう交差点でトラックに跳ねられた彼女が血まみれの手で拾い上げた髪止めを握りしめて泣いた15の冬。
あれから35年。今でもこの時期に流れる涙の訳は嫁も知らない。
もう少し待っててね。俺もそのうち行くから。