病院では速攻で鬱と診断され、抗鬱剤と睡眠導入剤を飲み始めた。効き目はわりとすぐにあらわれ、スコップでえんえんと地面を掘り続ける作業をノルマ付きで強要されていたような奇妙な焦りと疲労感が徐々に消え、心がすこんとフラットになった。
喜怒哀楽全ての感情が、ボリュームをしぼったように小さくなったのだ。喜びはないが、哀しみもない。

小指の先ほどもないちっちゃい薬ひとつで、あっという間にこんなに気分が変わってしまうのに驚いた。ヒトの精神とか想いとか中身ってなんなんだ、とちょっと虚無感も感じた。

そして、それまで一日中出口もなく考え続けてきた「自分について」という議題にもいきなり興味がなくなった。文章を書くこともほとんど出来なくなっていた。
書き始めても完結させられない、オチのある話を作れない。そこそこ閲覧者がいたブログもやめてしまった。長大な暇が目の前に現れた。
そうして一日中ただただインターネットから情報をボーッと受け取るだけの毎日が始まってしまったのだった。