https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180710-00174374-diamond-bus_all

 6月26日、横浜市で開かれた日産自動車の定時株主総会。ある男性株主が最終盤に質問に立ち、日産で昨年発覚した完成車の無資格検査問題に触れ、「あれだけのことを起こして誰がどう責任を取ったのか」と怒りをあらわにする場面があった。

 怒りの矛先は、日産の社長兼最高経営責任者(CEO)である西川廣人氏の報酬額に向けられた。西川氏の2017年度の報酬は前年度比26%増の5億円。度重なる不正発覚で株価を毀損したにもかかわらず、経営者が高額報酬を安穏と受け取っていたとすれば、個人株主に「誰も責任を取っていない」と批判されても仕方あるまい。

 だが、日産会長のカルロス・ゴーン氏の回答は明快だった。

 「日産CEOの報酬は非常に低い。会社の規模や優秀なリーダーを持つ重要性を考えると、決して不当な水準とは思えない」

 ゴーン氏によれば今回、外部のコンサルティング会社を使い、業界内外のグローバル企業の役員報酬を調査。その結果、日産と同規模のグローバル自動車メーカーCEOの平均報酬額は1770万ドル(約19億6000万円。年額、以下同)だった。
これと比較し、日産CEOの報酬は明らかに低く、しかも西川氏は問題発覚後に報酬の一部を自主返上している、というわけだ。

● トヨタで初の10億円超も

 ちなみにゴーン氏自身の報酬額は、前年度比33%減の7億3000万円。ただしこれに加え、ゴーン氏は会長を務める三菱自動車から2億2700万円、会長兼CEOを務める仏ルノーから740万ユーロ(約9億5000万円)の役員報酬を受け取っている。
つまり3社で総額約19億円という、まさにグローバル水準の報酬をしっかり受け取っているのである。

 他の自動車メーカー首脳の報酬額はどうか。例えばスズキ会長の鈴木修氏は2億2000万円、ホンダ社長の八郷隆弘氏は1億5500万円、三菱自CEOの益子修氏は1億4100万円だ。
一般のサラリーマンからすれば垂ぜんの額だが、ゴーン氏の言うグローバル水準に照らせば庶民的にすら見えてしまう。

 一方、トヨタ自動車の豊田章男社長は3億8000万円。だが17年度は副社長のディディエ・ルロワ氏に10億2600万円を支払い、同社の役員報酬として初めて10億円を超えたことが話題になった。
ルロワ氏といえば、トヨタがルノーからヘッドハンティングし、今やトヨタ車販売の最高責任者を務める人物だ。

 ゴーン氏が総会で強調したのは、グローバル競争が激化する自動車業界において「世界に通用する」経営者を採用し、つなぎ留めることの必要性だ。そのために競争力のある役員報酬が不可欠というゴーン氏の主張と実践は、清貧を美徳とする考えが根強い日本社会に、新たな変革を迫っている。