今月26日、米・ワシントンDCで開かれた「Defense One Technology Summit」において、アメリカ国防情報局長官ロバート・アシュリー中将が、「近い将来、ロシアと中国は宇宙兵器を保有する」と発言した。

 米国国防情報ニュース「Defense One」(6月27日付)によると、アシュリー中将はロシア・中国を「競争相手」と語り、
両国は地上からも宇宙からも人工衛星を妨害する能力を発展させており、近いうちに実用化されると警告したという。米軍諜報機関のトップがロシア・中国の軍事的宇宙開発に公の場であからさまに言及したのはこれが初めてだ。

 しかし、今年2月に発表された米国家情報長官の「世界の脅威評価(Worldwide Threat Assessment)」報告書でも同様の指摘がされている。

「ロシアと中国は、洗練された軌道上活動を行うための“実験的”人工衛星を打ち上げ続けている。これらの衛星のうちい
くつかは、対宇宙能力の向上を目的とされている。平和的利用のためのテクノロジー、たとえば人工衛星の調査、燃料補給、修理といったものは、敵対する宇宙船にも使用できる」

 今回、アシュリー中将がロシアと中国を名指しで挙げたのは、今月18日米ドナルド・トランプ大統領が発布した宇宙軍の創
設を指示する大統領令を受けてのことだろう。米国にはロシア・中国に遅れをとっているという自覚があり、今後本気で軍事的宇宙競争に参戦していく覚悟を決めたようだ。

「競争は激しさを増しています。国防戦略を見てみてください。われわれ米国の技術的優位はなくなりつつあるのです」(アシュリー中将)

 ロシアの米国に対する秘かな挑発行為は2014年9月に起こっている。当時、ロシアは人工衛星「Olymp-K」を打ち上げ、米国の
電気通信事業者「インテルサット」の人工衛星2機の間に潜り込むという奇妙な動きを見せた。Olymp-Kはインテルサットの衛星
からわずか10kmしか離れておらず、この事態を重く見た当時の米政府は極秘の会合をホワイトハウスで開いていたと報じられている。

 1967年にアメリカが宇宙区間の探査や利用における規則を定めた「宇宙条約」では、宇宙利用は平和的利用に限られているが、
「赤十字国際委員会」によると、同条約では核兵器などの大量破壊兵器の使用や、月などの天体の独占的使用目的を除いて、宇宙
空間での武器使用ははっきりとは禁止されていないという。そのため、今年3月には国防次官のマイケル・グリフィン氏が、地球
上のミサイルや小惑星などを破壊するために中性子ビームを使用するという80年代の計画を引っ張り出す可能性もあると発言している。

 そうなればまさに宇宙戦争の様相を呈すことになるだろう。遂に地球上での戦いは終わり、舞台は宇宙に移されるのか。今後も米中露の動きから目が離せない。
(編集部)

http://tocana.jp/2018/06/post_17363_entry_2.html