旅行者倍増、報道で関心? 政府、自粛呼びかけ

 北朝鮮に観光旅行する人が増えつつある。日本とは国交もなく、拉致問題も解決していない。経済制裁を行う政府は渡航自粛を
呼びかけているが、旅行会社の担当者は「北朝鮮に関するニュースが連日取り上げられ、関心が高まっているのではないか」
と話している。

 北朝鮮専門の旅行会社「ジェイエス・エンタープライズ」(東京都中央区)によると、同社が仲介した2016、17年の旅行者は
それぞれ年50人程度だったが、今年は5月時点で94人の申し込みがあった。今月12日に米朝首脳会談が開催された後は
団体客の申し込みもあり、6月15日現在で120人を超えた。その7割が20〜40代という。

 北朝鮮専門の旅行会社は数社しかないが、同社はその一つで、現地の旅行会社と調整して、申込者の関心に沿った旅行の
計画を組んだり、ビザ取得を手伝ったりしている。担当者は「(金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が南北首脳会談などで)
ミサイルを飛ばさないと発言したことで、『危険』というイメージが薄らぎ、もともと関心があった人が希望している」とみる。

 東京都の大学1年の男性(18)は「NKポップ」と呼ばれる北朝鮮の歌謡曲に興味を持ったことがきっかけで、昨年12月、
同社を通じて3泊4日で旅行した。

 「自由に質問はできなかったが、現地の中高生に学校生活を聞けた。素朴な子たちだと感じたし、政治観を抜きにすれば
魅力的な観光資源も多かった」と振り返る。平壌冷麺などの食に関心がある人や、今も利用されている旧型の鉄道や飛行機に
乗りたい人が訪れているという。

 北朝鮮は162カ国と国交があり、外国人観光客も少なくない。だが、観光客は事前に北朝鮮側と調整した場所しか訪れることができず、
滞在中は常に現地ガイドがついて回るなど行動は制限される。同社の小島健康社長は「行ける場所は限られるが、少しでも
北朝鮮を知る機会にしてほしい」と話す。外務省は「北朝鮮に対する経済措置の一環で渡航自粛を呼びかけている。
旅行の是非についてコメントする立場ではない」としている。【竹内麻子】
https://mainichi.jp/articles/20180620/k00/00e/040/289000c