6月12日にシンガポールで行われた米朝首脳会談で、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長は、米朝両国の新しい関係樹立、朝鮮半島の永続的かつ安定した平和体制の構築、
4月27日の板門店宣言の再確認と朝鮮半島の完全な非核化、そし朝鮮戦争で戦死した米兵の遺骨回収の4項目について合意した。

 その後の会見でトランプ大統領は北朝鮮の非核化の費用について「日韓両国が負担するだろう。彼らは支援しなければならないとわかっている」と述べ、
アメリカが北朝鮮の非核化のコストを負担するつもりがないことを明らかにした。

■「日本が負担するのは当然」

 北朝鮮の核の問題は日本にとっての脅威だが、北朝鮮との交渉に日本は具体的に参加していない。しかも北朝鮮との交渉の前提となる拉致問題については、
米朝首脳会談でトランプ大統領によって触れられたものの、解決への道のりはほど遠いのが現状だ。そのような状態で、果たして日本は負担を甘受しなければならないのか。

 これについて安倍晋三首相は、6月16日のテレビ番組で以下のように述べている。

 「日本の立場は明確だ。非核化を進める上で、IAEA(国際原子力機関)に頑張ってもらわなくてはいけない。かかる費用については、
核の脅威がなくなることによって平和の恩恵を被る日本等が負担するのは当然。このお金は北朝鮮に行くわけではない」

 では北朝鮮の非核化にはどのくらいの費用が必要になるのか。イギリスのユライゾンSLJキャピタル社が試算したところ、
北朝鮮の非核化には10年間で2兆ドル必要との結果が出たという。これは日本円で換算して約220兆円になるが、韓国と折半するとしても、とてつもない巨額な負担になることは間違いない。

 しかも日本はすでに、北朝鮮の非核化に巨額の費用を払っている。1994年10月の米朝枠組み合意に基づいて作られた朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)がそれだ。
米朝枠組み合意とは、北朝鮮が核拡散防止条約(NTP)締結国にとどまるとともに、IAEAによる核開発の検証や既存および開発中の核施設の稼働凍結・
解体を約束する一方で、アメリカは出力1000メガワットの軽水炉2基を供与し、年間50万トンの重油を北朝鮮に供給するというものだった。https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180617-00225577-toyo-bus_all