(前略)
到着したら、まず講義
モントリオール市内にあるNGOのオフィス。講師を務めるスタッフが、アフリカ諸国などから到着したばかりの移民約20人を相手に、フランス語で話していた。
「ケベック社会の共通の価値について聞いたことはありますか?」
多様性、フランス語、男女の平等、民主主義……。スタッフが、尊重すべきケベックの価値を説明していく。3時間の講義では、ほかにも銀行口座の開き方から
職探しまで、移民が順調に生活を立ち上げられるような情報を教える。
この到着直後の講座は州政府が財政支援して各地で開かれ、新たな移民は受講を強くすすめられる。この後にも1週間の定住支援プログラム、フランス語教室、
職探しのサポートなどを、行政とNGOが協力して、移民が社会にスムーズに溶け込めるようなプログラムを提供している。

(中略)

もう一つ、インターカルチュラリズムが重視するのが、移民も含め社会全体で共有する、共通の文化や価値観だ。
ブシャール教授は言う。「インターカルチュラリズムとは、妥協と均衡です。移民は自らの文化を保ちつつも、社会への統合を求められます。
ただし、統合は同化ではありません。社会の基本的なルールや根源的な価値を守るのであれば、多様性が確保されます。それは豊かさの源であり、
社会に彩りを与えうるものです」
※インターカルチュラリズム
一つの社会の中に、複数の文化が対等な形で共存するのが多文化主義だ。受け入れ社会への同化を求める同化主義に対抗する考え方として広がったが、
異なる文化ごとのコミュニティーがお互いに接点を持たず、社会が分断されるリスクがあるという指摘も出るようになった。

一方、インターカルチュラリズムは、多様性を尊重しつつ、異なる文化間の相互交流や共通の立場につながる取り組みを重視する。欧州評議会がこの考え方に
基づき推進するインターカルチュラル・シティー・ネットワークが知られている。また、カナダ・ケベック州におけるインターカルチュラリズムは、フランス語の
重視などの特徴がある。

https://globe.asahi.com/article/11602833