<強い信仰で結ばれた信者たちが集会を開くことはおろか、自宅で祈りを捧げることも許さないロシアのやり方は明らかな人権侵害だ>

ロシアの厳しい「反過激派法」に違反したとして、宗教団体「エホバの証人」の信者26人以上が摘発を受けた。同団体によれば、うち7人は、
公判前勾留により身柄を拘束されているという。

ロシア政府は2017年4月、エホバの証人を過激派組織に指定。以来、ロシアに住む信者推定17万5000人が、取り締まりの対象になっている。
信者の礼拝所は強制捜査を受けて閉鎖され、自宅でひっそりと礼拝するようになっている。にもかかわらずロシア政府は、多数の信者を逮捕している。
根拠となる刑法282条は過激派の活動を禁止する法律で、違反すると10年前後の実刑判決を受ける可能性がある。信者の逮捕は、
ウクライナとの国境に近いベルゴロドから、中国や北朝鮮との国境に近いウラジオストクまで、ロシア全土に及んでいる。

エホバの証人の国際広報担当者デービッド・セモニアンは本誌にこう語った。「ロシア当局はエホバの証人を非合法化するだけでは
満足できないということが、ここ数カ月ではっきりしてきた。当局は、ロシア憲法で保障されている信教の自由を否定するつもりだ」

5月中旬には9人が逮捕され、うち2人が、公判前勾留によりオレンブルグで身柄を拘束されている。直近では、5月27日にも逮捕者が出ている。
複数の信者の話によれば、この日はFSB(ロシア連邦保安局)が、ロシア・タタールスタン共和国の北東部に位置するナーベレジヌイェ・
チェルヌイ市で強制捜査を実施したという。

エホバの証人の代理人を務めるジャロッド・ロペスは本誌に対して、「ロシア・タタールスタン共和国のナーベレジヌイェ・チェルヌイ市にある
住宅10軒で、5月27日に捜査が行われた。捜査を行ったのはFSBの捜査官で、電子機器、携帯電話、パスポートが押収された。
捜査は夜に始まり、早朝まで続いた。イルハム・カリモフとウラジーミル・ミャクーシンが、FSBに身柄を拘束されたままになっている」と語った。

国際的な人権専門家によれば、ロシアによるエホバの証人の扱いは、明らかな人権条約違反だという。

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