安定職のイメージが強い公務員。よく見かける「親が子どもに就いてほしい職業」などの調査でも、常に上位をキープしているよう
に、その安定感から人気職になっているといえるでしょう。ですが、実際には公務員が免職になる制度は存在します。どのような仕組みになっているのでしょうか。(フリーライター:はるの)

●懲戒免職と分限免職
公務員が自らの意思によらずその職を失うケースは、大きく「分限免職」と「懲戒免職」に分けられます。懲戒免職については、よ
く聞く言葉ですね。懲戒免職は、懲戒処分の一つで、職務上の違反行為などに対して課されるものです。

例えば、公金を横領したり、盗んだりした場合や、公務外で放火、殺人などの犯罪行為をした場合には、懲戒免職となります(人事院「懲戒処分の指針について」http://www.jinji.go.jp/kisoku/tsuuchi/12_choukai/1202000_H12shokushoku68.htmより)。

もう一方の、「分限免職」は、「職務遂行に著しい障害がある」職員などになされる免職処分で、簡単に言うと、「仕事がきちん
とできない状況にある」ということです。分限免職の理由の一つに「勤務実績不良」、いわゆる、「仕事ができない」があります。
ただ、簡単に免職ができるわけではなく、訴訟に発展するケースもあります。裁判例を見てみましょう。

●勤務実績不良を理由にした分限免職をめぐり、訴訟に
実際に「勤務実績不良」を理由にして免職となり、裁判に発展したケースが、東京都武蔵村山市にあります。当該職員は分限免職を不服として最高裁まで争い、勝訴(東京地裁平成 24 年9月 26 日判決)。復職を果たしました。

裁判にて明らかにされた内容から当該職員は、「自己の業務の失念」、「シュレッダーを使用するが周辺を片付けない」、「注意されて
いる途中で帰宅する」など、職務を十分に遂行出来ていない様子がうかがわれ、再三の注意・指導に対しても改善が見られなかったことが読み取れます。

また、免職になる以前に問題行動を起こし、懲戒処分も受けています。

当該職員が免職になった理由として、武蔵村山市は「適格性欠如」と「勤務実績不良」をあげており、実際に当該職員の勤務実績は、判決の中でも「著しく低調である」と認められています。

なぜ、この処分が覆され、当該職員の復職は認められることになったのでしょうか。判決のポイントを見ていきましょう。

●病気を鑑みない「分限免職」は不当とされた
実際に当該職員の「分限免職」が取り消された理由は「病気」と「手続き上の不備」です。

「当該職員は『統合失調症』を発症しており、『勤務実績不良』は病気によるものである。病気による場合は、地方公務員法28 条1項2号にのっとり、『指定医師の判断』なくしては免職にはできない」というのが、当該裁判の結果です。

公務員を分限免職にする場合は、その職員が、メンタルヘルスにかかわる病気などに罹患しているかが大きなポイントになってきます。
実際、病気を理由にすれば、最長3年の休職が可能であり、免職の際も「指定医師の判断」など諸条件が必要となり、より免職のハードルは上がるのが実情です。

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