宇宙の4分の1を構成するとされ、目に見えず解明もほとんど進んでいない「暗黒物質」のない銀河の存在が28日、天文学者らによって初めて明らかにされた。
英科学誌ネイチャーに発表された論文は、今回の発見によって、銀河の形成方法に関するさまざまな仮説の見直し、あるいは大幅な修正が必要となる可能性があると指摘している。
論文の共同執筆者であるカナダ・トロント大学の天文学者ロベルト・アブラハム氏はAFPの電話取材に応じ、「非常に奇妙」と述べ、
「この大きさの銀河なら、通常の物質の30倍の暗黒物質があるはずだが、全くなかった」「こんなことはありえない」と驚きの声を上げた。
地球から約6500万光年離れた「NGC1052-DF2」、略して「DF2」銀河は、太陽系を含む天の川銀河とほぼ同じ大きさだが、恒星の数は1000分の1〜100分の1しかないという。
暗黒物質の存在は、暗黒物質の引力の影響を受ける天体の動きから推察される。
論文の共同執筆者である独マックス・プランク天文学研究所のアリソン・メリット氏は、「暗黒物質はすべての銀河に不可欠で、銀河をつなぎとめる接着剤、銀河が形成される際の足場と考えられてきた」と話す。
米エール大学のピーター・ファン・ドクム氏が主導した研究チームは、米ハワイ州にあるW・M・ケック天文台の大型望遠鏡を使って、「DF2」銀河内の約10万個の恒星で構成されるいくつかの星団の動きを追跡した。
その結果、これらの星団は銀河と同じ速度で移動しており、星団自体が宇宙を移動していることが判明した。もし暗黒物質があれば、星団はより速くまたは遅く移動するはずだ。
暗黒物質がまったく存在しない銀河というのは難問であり、天文学者らを悩ませている。
ドクム氏は、「これは、銀河の仕組みに関するわれわれの標準的な考えに異を唱えている」と述べ、
銀河ほどの大きさのものが暗黒物質なしでどのようにまとまっているのかを解明するのは難しいが、そもそもどう形成されたかを理解するのはなおさら困難だと指摘している。
説明はどうであれ、論文によると、暗黒物質のない銀河は暗黒物質の存在そのものに疑問を呈する天文学者らに皮肉な課題を提示した。

http://www.afpbb.com/articles/-/3169179
ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた「DF2」銀河。
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