皺もなく肌がつやつやして、長いまつげに青い目、形の良い肉付の良い唇、キュッとあがった口角、背中まであるカールした金髪、
髪の色だけが変わった。時計が止まったように美しさも止まったままだ。
店の商品の話になると急に骨董屋の厳しい女主の顔にかえり、一つ一つ説明をしてくれて、其のうえアメリカの骨董業界の
話までしてくれて私を楽しませてくれた。一八、一九世紀の家具は今の若い人の生活様式に合わなくなったこと、
その点ミッドセンチュリーの家具が売れるに違いないと睨んだ事、さすが商才のあるアナだ。
「ウワーすごい知識ね、アメリカでも骨董屋を?」
「ええ、でもあの男とは離婚したわ。慰謝料しっかりもらって帰ってきたの」とえらく自信に満ちて言う。
「へエー」…こんな時は、慰めるべきか、祝いを言うべきか、学校ではちゃんと習わなかったなァ。
「貴女は全然年を取っていないのね。昔と同じよ、美しいわ」
「私ね、今度四回目の結婚をするの」さっきの厳しい顔が急に緩んだ。アア成程、美しいわけだ。
「わー、おめでとう」
http://www.nikkeyshimbun.jp/2018/180320-62colonia.html