http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1803/14/news056_2.html
苦悩する「まちの電器屋さん」 Amazonの威力、小売り激減

 インターネット通販のアマゾンが、流通に大変革をもたらしている。書籍にとどまらず、ファッションや生鮮食品までクリック1つで購入できるようになった。

あらゆる商品が網羅され、どこにでもすぐに届けてくれる。さらに「この商品を見たお客さまはこれも見ています」と、蓄積された購買履歴や売れ筋ビッグデータを分析して好みの商品を推薦し、消費者の購買欲を刺激する。
ネット取引の国内市場規模は平成22(2010)年に7兆7880億円だったが、28年は2倍近くの15兆1358億円と飛躍的に膨らんでいる。

 アマゾンの台頭は、消費者の生活スタイルを劇的に変え、世界の小売業界を一変させた。日本も例外ではない。買い物の利便性が高まる一方、街からなじみの小さな書店や衣料品店が次々と消えた。
経済産業省によると、昭和63年に全国で約2万8千店あった書店は平成26年に3分の1以下の約8千店に、衣料品店も約11万9千店が約8万6千店にまで落ち込んだ。

 流通業界に詳しい中小企業診断士の中井彰人(54)は「生まれたときからネットに触れてきた世代も増え、ネット通販はますます広がる」と指摘する。

ピーク時の4割減

電話1本で洗濯機の修理に駆け付けてくれたり、電球を取り換えてくれたり……。パナソニック創業者の松下幸之助が昭和32(1957)年、日本で初めて本格的に系列化した地域電器店は安値競争で家電量販店に地位を奪われてきたのに加えて、
ネット通販の登場で追い打ちをかけられた。ピーク時の昭和58(1983)年に全国2万7200店を誇った店舗数は、今や1万5千店にまで減少している。

 ただ、ピーク時の4割減となった系列店だが、販売シェアが激減する中で見方によっては6割が残っているともとれる。全国1万5千店という規模は、家電量販店の約2500店、
コンビニ業界第3位のローソンの約1万3千店を超える。系列店は今も、パナソニックの家電販売の約2割を担う国内最大級の販売網だ。

 パナソニックの前身、松下電器産業の勤務経験から「島耕作」シリーズを描く漫画家、弘兼憲史(70)は「高齢化の中で、小回りが利く電器店は地域のよろず聞きの役割ができる」と系列店の活用を提案する。