米国最大手の配車アプリ企業であるウーバーが、興味深い戦略を次々と打ち出しています。同社はタクシーに代わる配車アプリで拡大し、
未上場なのに企業価値が数兆円を超える「ユニコーン」と呼ばれる“隠れた大企業”に急成長しました。

ソフトバンクなど世界の有力投資家が株主として名を連ねる中で、ウーバーが打ち出している一連の施策にはどのような意味があるのでしょうか。
事業戦略の裏にある同社のビジョンをひも解いてみます。

ウーバーが職業訓練を始める意味
このところ、ウーバーに関する奇妙な記事が立て続けに経済紙で報じられました。その1つが、同社サービスに登録する運転手に対する職業訓練プログラムに、
まとまった資金を拠出するというものです。

同社には全世界で300万人、米国だけで75万人のドライバーが登録しているといいます。そのほとんどがフリーランスです。世界的な大企業の従業員でも10万人規模ですから、
いかにウーバーが巨大な雇用を生み出しているかがわかります。

ところが、同社は「長期的には雇用が減る」と考えているようです。そのような未来に向けて、今のうちから登録しているドライバーに新しい職業訓練の機会を提供しようというのです。

ウーバーが見据えているのは、自動運転車が登場する未来です。2022年には人間の運転が必要ないレベル5の自動運転車が出現するといわれています。同社は、
それが社会全体に浸透するには10年ぐらいかかると見ているようですが、そうなれば自動車社会には大きな変化が起きます。

自動運転車の普及で車社会は激変
自動運転車が世の中の大半になるぐらい普及すると、どのようなことが起きるのでしょうか。ウーバーは、自動車の台数が9割以上も減ると考えているようです。

米国は車社会ですが、車がなければ生活できないからこそ、大量の車が走っています。ところが、その車の大半は駐車スペースに停まっています。
ライドシェアの形で車を多数の人々で共有するようになれば、世の中に必要な車の台数は劇的に減少します。

しかも、自動運転車なら運転手が必要ありません。ウーバーで呼べば、近くにいる車が自動で迎えに来てくれる。車の稼働率が格段に上がる未来が予想されます。

しかしそうなると、ウーバーに登録している運転手は皆、失業してしまいます。その変化が10年ぐらいかけてゆっくりと、しかし確実に起きるのです。
そうなっても登録ドライバーたちが困らないよう、今のうちから職業訓練のプログラムをサービスメニューに加えておくというのが、今回の報道の背景にある事情のようです。


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