でも一周回ってこのオブジェ、実は本当にすごい芸術作品のように思えてきた。

全裸に覆面という異様な風体が目を引くが、この像からはほとばしる勢いを感じるんだよ。
ちょっと姿勢に注目して欲しい。
指先までそろえて体側にぴったりついている。ぱっと見いい姿勢に見えるが、これは力み過ぎた人間としては不自然な姿勢。
伸び伸びとしたオリンピック選手とは対照的だ。
立派な体格の男が意に沿わぬことを、不自然な姿勢を強いられている。
顔が見えないことで、逆にその表情をあれこれ想像させるんだよね。苦痛か、苦悩か…。
これが設置された環境も合わせて考えて、衆人に晒される羞恥、野ざらしに置かれる寒さ、それらのストレスに声を上げ、他人や物に当たるわけでもない。
世界にいる顔の見えない誰か、ストレスをすべて自分の中に抱え込む辛さ、そんな人たちがいることに思いを馳せて欲しい、そんな意図が込められているのではないだろうか。