東北大学の研究成果プレスリリース情報『原子層鉄系高温超伝導体で質量ゼロのディラック電子を発見』(共同通信PRワイヤー)

 2018年1月12日 09時00分(最終更新 1月12日 09時00分)

【概要】
東北大学大学院理学研究科の中山耕輔助教、佐藤宇史教授、同大学材料科学高等研究所の高橋隆教授らの研究グループは、原子層鉄系高温超伝導体において、質量ゼロの性質を持つ「ディラック電子(注1)」を発見しました。
この成果は、超高速・超伝導ナノデバイスの実現に道を拓くだけでなく、高温超伝導の発現機構の解明に向けても重要な一歩となります。
本成果は、米国物理学会誌フィジカル・レビュー・Bの注目論文に選ばれ、平成29年12月29日(米国東部時間)にオンライン速報版に掲載されました。
【研究の内容】
今回、東北大学の研究グループは、分子線エピタキシー法(注4)を用いて、酸化物の基板上に原子レベルで制御された高品質な1層のFeSe薄膜を作製しました。
また、作製した薄膜を超高真空中において精密な温度制御下で加熱することで、高温加熱の場合は高温超伝導が起きる薄膜、低温加熱の場合は超伝導が起きない薄膜と、性質の全く異なるFeSe原子層薄膜を作り分けることに初めて成功しました。
その薄膜の電子状態を角度分解光電子分光(注5)(図2)という手法を用いて調べた結果、低温加熱によって得られた超伝導を示さない薄膜において、質量ゼロのディラック電子が存在することを明らかにしました。
また、2〜20層の多層膜についても同様の測定を行った結果、ディラック電子のみが伝導を担う理想的なディラック電子系は、1層の原子層薄膜でのみ実現していることを突き止めました。
すなわち、理想的なディラック電子系の実現は、原子層薄膜ならではの性質と言えます。今回の研究によって、FeSe原子層薄膜は、高温超伝導のみならず、グラフェンと類似のディラック電子系としての性質も持つことが明らかになりました。
また、これら2つの全く異なる性質を、加熱温度を変えるという極めて簡便な手法で切り替えられることも見出しました。


https://mainichi.jp/articles/20180112/pls/00m/020/501000c