企業の業績が急拡大している。

上場企業の今年度上期(4〜9月)決算では軒並み最高益を更新する企業が続出し、その多くは2018年3月期決算では過去最高水準の収益を達成する見込みだ。

大手企業が最高益を更新し、人手不足がこれだけ高まっていれば、当然、誰もが給与も上がるだろうと考える。
ところが給与の上がる気配はないし、来年も上がる見込みは薄い。

その事実は「労働分配率」の低下からも確認できる。

労働分配率とは企業が稼いだお金から「労働者に支払った報酬」の割合であるが、「国民経済計算」「法人企業統計」をもとに厚生労働省労働政策担当参次官室が作成した資料(2016年労働経済の年間分析)によれば、
アベノミクスによる景気回復期においてもなお下がり続け、2015年はついに62%と2000年以降で最低になっている。

では、企業の儲けはどこに消えているのか。

ひとつは企業利益の蓄積である「内部留保」、もうひとつは株主配当などの「株主等への分配」である。

内部留保は毎年積み上がり、2016年度は406兆2348億円と過去最高を更新した。一方、株主等分配率は2004年以降上昇し続けている。
2016年の株主への配当金の総額は20兆円を超え、純利益に占める割合は40%を超えている。
つまり、給与を抑えて内部留保と株主への分配に回しているという構図である。

給与を上げるには内部留保を取り崩して給与に回すか、株主への分配率を引き下げるしかない。

政府もため込んだ内部留保を賃金に回すように要請しているが、経済界の抵抗が強い。経営に対する株主の力が強くなり、株主への利益還元への圧力も年々高まっている。

給与が上がるか、上がらないかは企業の行動しだいということになるが、今後どうなっていくのか。

「最高益」が続出しているのに…… 内部留保を給与に回さない企業の残念回答
http://president.jp/articles/-/23598