残業上限150時間に増 是正勧告受け改悪

時間外労働に関する労使協定(36協定)で定めた月100時間の上限を超えて医師に残業させたとして
岐阜労働基準監督署から是正勧告を受け、岐阜市民病院(同市鹿島町)が、上限を150時間とする
協定を結び直していたことが18日分かった。「労働基準法の趣旨に反し、ナンセンスだ」と批判の声が
上がっている。

病院によると、2016年5月に「(年)6回を限度として1カ月100時間まで」の時間外労働を可能とする
労使協定を結んだ。しかし、上限を超えて働く医師が複数人いることが労基署の調査で11月に判明。
労基署から即時是正を求められた。そこで今年5月に上限150時間の協定を結んだという。

同病院によると、時間外勤務が多い救急診療部ではベテラン医師2人以外は、他の診療科目の医師から
応援を得て24時間365日対応している。当直勤務は午後5時から翌日午前8時半までだが、その前後も
さまざまな業務をこなし帰宅できないことも多く、急患対応などに伴い残業時間が増えるのが現状という。
副院長で、同部で診療もする上田宣夫医師は「非常にストレスが高く、夜中もいつ呼ばれるか分からない」と話す。

厚生労働省の定める「過労死ライン」は月80時間とされる。政府は3月、働き方改革実行計画をまとめ、
残業時間は「繁忙期でも月100時間未満」などの上限規制を盛り込んだ。しかし、医師は医療行為を
施すことを正当な理由なく拒めない「応招義務」があるとして規制適用を5年間猶予している。

冨田栄一院長は「患者にかかりつけ医を紹介したり、文書業務を支える補助者を増やしたりし、医師の負担を
減らす仕組みを整えてきたが、医師の増員は予算上容易でない」と話している。

日本医療労働組合連合会(東京都台東区)の森田進書記長は「月150時間は異常な協定だ」とし、労基署の
指導方法も「(協定改定で)違法でないように見せるだけの結果になっている」と批判。「過労死ラインを超えて
働く医師の過重労働は、応招義務を拒める『正当な理由』に当たらないのか」と政府の規制適用猶予にも
疑問を投げかけている。

岐阜労基署は取材に対し、「個別の案件には答えられない」としている。

https://mainichi.jp/articles/20171119/k00/00m/040/088000c