ノーベル物理学賞受賞の梶田氏「日本、少なくとも科学技術立国には向かっていない」
―物理学賞が決まったその日から、基礎研究や若手支援の重要性を説いてきました。
「この2年間、機会を頂くたびに日本の科学技術が危機的な状況にあることを説明してきた。
特に若手研究者の待遇は厳しい。ただメッセージがどれだけ伝わっているのかはわからない。これまでの政策や大学改革は本質的に正しかったのだろうか。少なくとも科学技術立国には向かっていない。
日本はどんな国を目指すのか。もし科学技術でないなら、何かを示してほしい」
―すぐには役に立たないとされる「学術研究」をどう支えるべきですか。
「貧弱になった大学の運営費交付金を立て直し、日本学術振興会の『科研費』を拡充すべきだ。もともと運営費交付金の削減分を競争的資金として分配するはずだった。
だが科研費は伸びず、交付金の削減分を補えていない。科研費の採択率は3割に届かない。採択されても提供される資金は申請額の7割程度に過ぎない」
「また研究者が研究に使える時間が短くなっていることも深刻だ。研究者に対する支援スタッフの数が少ない課題もある。
日本は経済協力開発機構(OECD)諸国の中でも異質ではないか。他国が科学技術予算を増やす中、日本だけが大学や研究機関の体力をそぎ落とし続けている。
社会として問題の深刻さを共有できていない。このままでは科学技術を立て直す時期を完全に逸する」
―文科省も看板を掛け替えながら支援策を続けているのでは。
「政策が短命では長期育成が難しい。大学が6年間の教育プロジェクトに採択されても、多くの大学院生にとっては2年か3年間プロジェクトに参加するだけだ。これが大学院教育としてあるべき姿だろうか」
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