文部科学省の審議会が、学校法人加計学園の獣医学部新設計画を認めると林芳正文科相に答申した。

政府の国家戦略特区制度を活用した計画である。
公平、公正であるべき行政がゆがめられたのではないか―との疑問は残ったままだ。

うやむやな状態で来年4月の開学を迎えるわけにはいかない。
引き続き国会で経緯を明らかにする必要がある。

愛媛県今治市に岡山理科大の獣医学部を設ける。
1966年の北里大以来52年ぶりの新設だ。審議会は学生の実技経験の質的・量的充実を図ることなど留意事項を付けた上で「可」とした。文科相が近く認可を最終決定する。

学園の加計孝太郎理事長は安倍晋三首相が「腹心の友」と呼ぶ長年の友人である。
計画を巡り「総理のご意向」「官邸の最高レベルが言っていること」などと記した文書が見つかり、特区の認定に疑念が生じた。

定員140人と全国最大の規模になる。答申までに実習などを巡り審議会から多くの意見が出されている。学園は定員を当初の160人から減らすなど対応した。

特区認定に関連して見過ごせないのは、5月に「獣医師の社会的な人材需要の動向が不明」と指摘されていたことだ。

政府は、獣医学部新設の条件として▽獣医師が新たに対応すべき具体的な需要▽近年の獣医師の需要動向を考慮―など4項目を2015年に閣議決定している。

特区諮問会議で計画を認定したのは今年1月だ。その後、審議会は「需要が不明」として需要見込みの分析、説明を学園側に求めている。
諮問会議はどんな根拠で条件を満たすと判断したのか。

これまでの国会審議では、特区を担当する地方創生担当相が「具体的な需要を完璧に描ける人はいない」などと強弁を重ねた。
「既存の大学では対応が困難」との項目については、各大学に確認していないと答えている。「認定ありき」の疑いが拭えない。

http://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20171111/KT171110ETI090005000.php
続きます