この処刑される直前のことです。

三成は「ノドが渇いた。水が飲みたい」と言いました。

すると周囲の人は、言ったのです。

「残念ながら、今は水がない。
しかしかわりに、柿がある。
かわりにこれを食べてはどうか?」
あなたなら、どうしますか?

おそらく大半の方が「そっちがいい! 食べる!」と言うはずです。

しかし、石田三成は、こう答えたのです。
「柿は、体を冷やし、お腹を壊すことがあるから、いらない」
もちろん、そんなことはないと思いますが、当時はそう考えられていました。
とはいえ、当時であっても「そんなこともありえる」くらいで、大半の人が気
にせず食べていたでしょう。

ただ少なくとも三成は「体に悪い可能性がある」と考え、そして断ったわけで
す。
これを聞いて、柿を渡そうとした男は、笑いながら言いました。

「お前は今から首を切られるのだぞ?
それなのに、その後の体調のことなんか心配してどうするんだ?」
すると三成はこう言ったのです。

「立派な人間たるもの、たとえ眼前に死刑を控えていたとしても、その最期の
瞬間まで体を大切にし、一生懸命生きるべきなのだ」