国際オリンピック委員会(IOC)で、2020年東京五輪・パラリンピックの準備状況の監督役となる調整委員会のジョン・コーツ委員長が
毎日新聞の取材に応じ、大会経費について「今後の五輪のためには10億ドル(約1000億円)の削減を目標とすべきだ」とさらなる努力を
求める考えを示した。巨額な大会経費を住民が敬遠して世界各地で五輪離れが進む危機にコーツ氏は「経費を削減すれば、招致を検討
している都市の住民などが受け入れやすくなると思う」と述べ、五輪存続のための至上命令と位置づけた。【リマで田原和宏】

 東京都は五輪・パラリンピックを合わせた大会経費を約1兆3850億円と試算した。内訳は施設整備など会場関係費8350億円、輸送、
セキュリティーなど運営に関わる大会関係費5500億円。IOCは都、大会組織委員会、政府との4者協議を設置して、大会運営の見直しに
関与してきた。組織委は14年にIOCが採択した中長期改革「アジェンダ2020」に基づき、都周辺の既存施設を活用して、約2000億円の
会場関係費を削減した。コーツ氏は「確かに会場関係費は削減することができた」と評価しながらも「近年、膨らんでいるのは運営費だ」と指摘した。

 このため、コーツ氏が今回削減目標の対象にしたのは大会関係費の5500億円。コーツ氏は「過去の大会で無駄な使い方をしている部分がある。
多くの部分で削減したが、まだ現在進行形だ。慎重に見極めて組織委に『必要ない』『削減できる』と提案する必要がある」と強調した。

 具体的な見直し対象として、会場に入場する際のセキュリティーチェックにおける仮設施設の規模▽五輪ファミリーと呼ばれるIOC委員や
国際競技団体の役員に向けた食事の量▽会場におけるバスの待機所の広さ▽ボランティアや大会役員の数▽IT関係の費用−−などを挙げた。

 深刻な五輪離れを受け、IOCは24年をパリ、28年をロサンゼルスに割り振る異例の同時決定をした。今後、多くの立候補を促すために
東京五輪の役割について、コーツ氏は「まだ運営費の削減を達成できていない」とハードルを設けたうえで「だからこそ我々は達成できるように
指摘を続けなければならない」と決意を示した。

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https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20170920/k00/00m/050/143000c