昔は寄席の場で俳優や芸人や音楽家が演技や芸や音楽を披露していた。
音楽家はレコードの発明以降、レコード産業やラジオでも稼げるようになる。
そして映画の登場で俳優も舞台以外でも稼げるようになる。
このころまだ漫才はブームにもなっておらず、ラジオのメインは専ら落語家だった。
分業がいっかりとなされており、ラジオに出ても餅は餅屋だった。

ところが戦後テレビの普及がこれらの勢力図を塗り替える。

歌謡曲歌手、俳優、芸人、アナウンサー、
今まで違う世界で活動していた人間がテレビにまとめられていき
そこでアイドルやタレントも登場してくる。

漫才師や俳優やアナウンサーが司会業をし、歌手やアイドルが歌い、
芸人もまた歌手みたいに歌いレコードやCDをだすようになった。

バラエティー番組で歌手や俳優がタレントや芸人と同じ雛壇で楽屋トークをするようになった。
俳優も歌手も昔は技能として尊敬される存在であったが、
気がつけば俳優や歌手に対する敬意はタレントと同等になり消え失せてしまい、
司会をおこなう漫才師がピラミッドの頂点に立つようになった。
気がつけば漫才師やアイドルがニュース番組の司会をしたりとハチャメチャだ。

ネットの普及と同時にCDも売れなくなった時代、
音楽番組も激減する中でトークができない音楽家は真っ先に寄席の場に回帰していった。

テレビの制作費も激減するなか、低予算で作れるトーク番組ばかりになってしまった。
つまり今は喋りが下手な音楽家や俳優はテレビの世界では生存できない。

テレビの黄金時代はとうの昔、求められるのはお笑い芸人のような能力のみ
それならばと、お笑いバラエティーを作れど、
視聴者からみても昔やってた番組の焼き直しばっかりじゃねーかとなる。
しかも放送倫理の問題で劣化したつまらない焼き直しばかりとなる。

つまり餅は餅屋であることをテレビ局はすっかり忘れてしまっている。