森友学園。はっきり言えば「おかしな幼稚園」の些末な問題でしょう。それなのに、各メディアは続々出てくる
虚実ない交ぜの情報に振り回され、大きな時間・スペースを割き報道合戦を展開。特に森友学園周辺から発信された、
マスメディア側にとっては「伝聞」でしかない情報を注釈もつけずにそのまま報じたことは、ジャーナリズムの
本質から逸脱した自傷行為だったというしかありません。

豊洲移転問題も同様です。この問題を政治利用したい都知事、それに乗りたい議員や活動家、さらにそれを
うのみにする支持者…。よくある構図ですが、メディアがその流れを加速させてどうするんですか。豊洲新市場の
安全性が問題ないと科学的にほぼ実証されても「安心できない」と不安をかき立てる側に回る。原発事故に絡む
放射能の問題と構図は似ていますが、ファクトを積み上げればもう少しすっきりする問題を、わざわざ陰謀論的な
展開に持っていく。取材も検証も俯瞰も放棄したメディアの成れの果ての姿を見せられている気がします。

彼らがどんな与太話にも正義を振りかざすのは知的怠慢ではなく、確信犯的な悪意あってのことかもしれません。
しかし、権力をお気楽に叩ける立場という既得権に甘え、正義をポルノのように量産することがメディア自らの
存在価値を毀損していることをどこまで自覚しているでしょう。もしかすると「視聴者はバカだ」「読者は何も
わかっていない」と高をくくっているのかもしれませんが、そろそろ襟を正し、“情報を咀嚼する能力”を示さないと、
冷静な人たちからどんどん見放され、手遅れになってしまう。そのタイムリミットは刻一刻と近づいています。

Morley Robertson
国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。
フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中。
http://wpb.shueisha.co.jp/2017/04/25/83630/