2020年の東京五輪で、熱中症の危険を訴える専門家や競技関係者が相次いでいる。桐蔭横浜大などの研究チームがまとめた予測によると、
開催期間(7月24日〜8月9日)は運動を中止すべきだとされるレベルを大幅に超えるという。国なども熱中症対策に乗り出しているが、
「選手だけでなく、観客や運営ボランティアも含め、対策をさらに推し進める必要がある」と警鐘を鳴らしている。

 研究チームは、04〜14年の開催期間での東京・大手町の気温や湿度、日射など気象データを使って、熱中症の発症リスクを表す「暑さ指数」を
算出したところ、年0.4度の割合で上昇していると分析。このままだと、20年には34度を超えると予測した。

 また、14年に新国立競技場など計7カ所の開催予定地で暑さ指数を測定したところ、大半が32度以上を記録。15年にはマラソンの予定コースで、
測定した9地点全てが31度以上だった。

 環境省によると、暑さ指数が28度を超えると熱中症患者が急増するとされる。28〜31度は「厳重警戒」レベルで、激しい運動は中止するよう求め、
さらに31度以上は「危険」レベルとなり、運動は原則としてやめるよう推奨している。

 東京と過去約30年の開催都市の熱環境を比較した横張真・東京大教授(都市工学)は「東京が最悪で、そもそも競技を実施してよいレベルではない。
熱による人体へのダメージがかなり大きい」と警告する。

 こうした過酷な環境が特に懸念されるのがマラソンだ。04年のアテネ五輪女子マラソンでは、酷暑による熱中症のため参加者の約2割が棄権している。

 12年のロンドン五輪で男子マラソンコーチを務めた小林渉・日本ランニング協会代表理事も「非常に危険。夏は関東など暑い地域で大会を
ほとんど行わない」と懸念する。

 酷暑の中、選手が能力を発揮するにはかなりの工夫が要りそうだ。1991年の東京国際女子マラソンで優勝したマラソンランナーの谷川真理さんは
「日本選手は蒸し暑さにある程度慣れており、応援も多いので有利かもしれない」としつつも、「水分の補給や、より通気性のいいウエアを身につけるなど
対策が必要」と指摘する。

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https://mainichi.jp/sportsspecial/articles/20170729/k00/00e/040/224000c