安倍晋三首相が大田昌秀元沖縄県知事の県民葬に出席する。大田氏の在任時に日米が合意した米軍普天間飛行場の全面返還を推進し、沖縄に真摯(しんし)に向き合う姿勢を示す狙いもある。
しかし、政府が普天間返還への「唯一の解決策」とする辺野古新基地建設は、大田氏が唱えた「基地のない平和な沖縄」と全く異なる。

25日に東京都内で開かれた全国都道府県議会議長会で、事務局から報告があった。
「明日の懇談会は首相の日程により急きょ延期します」。事前に決まっていた日程をキャンセルしてまで、首相は来県する。

県は、知事経験者の県民葬に、時の首相を招待してきた。1997年に開かれた元琉球政府行政主席で初代県知事の屋良朝苗氏の県民葬には、当時の橋本龍太郎首相が参列。
01年に亡くなった西銘順治元知事の際には、首相代理で尾身幸次沖縄担当相(当時)が出席した。

ただ、招待とはいえ、首相が特定自治体の首長経験者の式典に出席すること自体は異例だ。
政府関係者は「歴代知事の中でも、戦争を体験し平和を求めた大田さんに対する県民のシンパシーは別格だ。辺野古問題で前面に立つのは官房長官。距離を置く首相が負担軽減を語るいい機会だ」と説明する。

県民葬を前に、県は再び国を相手に提訴した。悼む場で対立する雰囲気は漂わせたくないが、両者の関係は冷え込んでいる。
「知事はどういうあいさつをするのか。せっかく出席した首相にやじが飛ぶことにならないか」。
別の関係者は、慰霊の日の沖縄全戦没者追悼式で見られるように抗議の声が浴びせられることを懸念した。

県は、前例に倣い案内状を送付したが、首相の出席ではなく沖縄担当相の代読を想定していた。
県幹部は「本当に出席するのか」と驚きつつ「基地、政治問題は抜きに、大田元知事をしのびに来るのだろう」と話す。

一方で、別の幹部は支持率下落が続く現状に触れ、「県民葬出席による首相へのマイナス要素は一つもない」と、判断の裏には世論対策の意図もあるとの見方を示した。

http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/118585
安倍晋三首相(左)と故大田昌秀元沖縄県知事
http://www.okinawatimes.co.jp/mwimgs/c/9/-/img_c9a63fef51afc8d7378cef28971a6cb91976022.jpg