「こんな人たち」と国民を分断 安倍さんの本質

 「こんな人たちに皆さん、私たちは負けるわけにはいかない」。東京・秋葉原で1日、
安倍晋三首相が今回の東京都議選を通じて唯一行った街頭演説。「帰れ」「辞めろ」コールを
浴びた首相はこう言い放った。恐らく戦後政治史に残るであろう「秋葉原演説」。
あの光景が浮き彫りにしたものは何か。今一度、考えたい。

「まさか、ああいう言葉を国民に向けるとは思っていなかった人が多いのではないでしょうか。
国会で民進党や共産党を相手に言うのとは意味が違います」とコラムニストの小田嶋隆さん。
永田町での振る舞いが秋葉原で可視化された意味は、決して小さくないとみる。「自分に賛成
しない人間を『国民とは別のカテゴリー』に分けたようなものですから」
 味方と敵を峻別し、身内をとことんかばう一方、自分を批判する相手には攻撃的な態度を
隠さない。安倍政権の根底にある、まるで「不良少年グループ」のような世界観を、小田嶋さんは
「ヤンキー的」と表現する。(略)

 作家で法政大教授の中沢けいさんは、在日コリアンらへの差別をあおるヘイトスピーチ問題に
取り組んできた経験から、秋葉原演説への違和感をこう語る。「安倍さんは『自分に反対する
ような人』として、虚構の敵を自分で作り上げているのでは」。つまり、ヘイトスピーチと
共通の構造が見て取れるというのだ。
「首相の秋葉原演説の主語は『私』じゃなくて、『私たち』でした。自分の周りと、安倍政権に
異議を唱える人を分断しているのがよく分かります。社会に亀裂を生み出し、それを使って権力を
伸長させていく。下手な言論統制より怖い手法です。憎悪をあおって社会に分断をもたらそうと
するヘイトスピーチと同じです」
 今回の演説で中沢さんは、安倍首相が2015年2月19日の衆院予算委員会で、当時の
民主党議員に「日教組!」とやじを飛ばした場面を思い出したという。「答弁の時に
『やじらないでください』と言っておきながら、自席から自分がやじる。一国の首相がとる
行動でしょうか」(略)
https://mainichi.jp/articles/20170710/dde/012/010/014000c