午後6時に突然、映画「ロッキー」のテーマ曲に切り替わった。終業時刻を告げる合図だ。
 社員が次々と立ち上がり、「私は7時までかかります」「私はこれで帰ります」。机を接する
同じ班で順番に宣言していく。残業が長くなりそうな社員には、上司がアドバイスしたり、
周りが手伝いを申し出たりして、早く帰宅できるよう協力し合う。

 オフィスで決まった時間帯に音楽を流す取り組みは、総務、経理、人事などの部署で
2014年10月から始めた。社員のリラックスや、メリハリをつけて働いてもらうのが狙いだった。
最後が「ロッキー」なのは、勇壮な曲調で「残りの仕事もがんばろう!」と奮い立たせるためだ。
残業は「減ってくれたらよい」ぐらいの期待感だった。

 昨年10月に対象部署の勤務時間を調べたところ、「意外な効果の大きさに仰天した」
(人事部の町山誠人事グループ長)。取り組みを始めて残業時間の合計が2〜3割ほど減った。

総務部の加藤卓郎さん(34)は「音楽が区切りになってだらだらと職場に残らなくなり、
帰りやすい雰囲気になった。帰宅は2時間ぐらい早くなった」と喜ぶ。経理部の
若林敏行さん(35)は「常に『ロッキー』から逆算して段取りなどを考えるようになった」。
オフィス外でも「ロッキー」を聞くと無意識に「仕事は何が残っているか」と考え出すという。
http://www.asahi.com/articles/ASK774HGHK77ULFA00W.html