共謀罪は、犯罪の実行を計画した段階で罪に問うものだ。計画を客観的に立証するには、
電話やメール、LINE(ライン)を傍受するなど、日常生活に入り込まなくては立証が
難しい構造になっている。捜査側は、共謀罪を通信傍受の対象犯罪にすることや
衛星利用測位システム(GPS)捜査の立法化、令状の要らない盗聴(行政傍受)や
室内盗聴(会話傍受)といった新たな捜査手法が必要だ、という主張を強めるだろう。

 心配なのが捜査機関の成績主義だ。仕組みをつくると結果を出さなければいけなくなる。
警察が選挙違反をでっちあげた鹿児島の志布志(しぶし)事件、大阪地検特捜部の
証拠改ざん事件など、予断や偏見、見込みで誤った捜査が行われてきた。
共謀罪の立証では、自白や密告が重要な鍵となるため、見込み通りの供述や証言を
得ようとする強引な捜査がこれまで以上に行われかねない。

 捜査機関が密告に頼ることで、市民による市民監視につながらないか懸念される。
こうした捜査や監視が、市民団体や労働組合などに向けられる可能性は否定できない。

 沖縄・辺野古(へのこ)の新基地反対運動では、座り込む市民と沖縄県警の間で
微妙なバランスが保たれていたが、二〇一五年十一月の警視庁機動隊の派遣後、
警察の排除行動が激しくなったという。その後、運動のリーダーが長期勾留された。
警察が国策に沿って恣意(しい)的に権力を使ったのではないか。共謀罪は、
そうした捜査をも早い段階から可能にするもので、市民の萎縮につながる。
物言う自由が危機にさらされる。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2017071090070140.html