安倍晋三首相には逆風が吹きすさぶ選挙だった。
自民党は四年前の前回都議選から大幅に議席を減らす歴史的大敗だ。
「安倍政治」を許さないという都民の怒りを、深刻に受け止めるべきである。

首相が今回、街頭で応援に立ったのは、選挙戦最終日の一カ所だけ。告示前を含めて三十カ所近くで街頭に立った前回と比べ、首相の置かれた厳しい状況を物語る。

「準国政選挙」と位置付けた前回から一転、今回は「都民が直面する地域の課題、東京独自のテーマが争点になると思う」(首相)と国政との分離を図った。
国政の混乱が都議選に影響するのを避けたかったのだろう。

国政と自治体選挙とは本来、別だが、完全に切り離すことは難しい。
むしろ都議選結果は、それに続く国政選挙の行方を占う先行指標になってきた。

自民党が今回の都議選で逆風に立たされたのは、丁寧な政権運営とは程遠い、安倍政権の振る舞いが影響したことは否めない。

まずは「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法の審議に代表される強引な国会運営だ。

罪を犯した後に処罰する日本の刑事法の原則を根本から覆し、国民の懸念が強いにもかかわらず、参院では委員会での議論を打ち切り、採決を省略する「中間報告」という奇策で成立を強行した。

首相自身や金田勝年法相の不誠実な答弁も反発を買った。

さらに森友、加計両学校法人をめぐり、公平・公正であるべき行政判断が「首相の意向」や忖度(そんたく)によって歪(ゆが)められた、との疑いは結局、払拭(ふっしょく)されなかった。
野党が憲法に基づいて臨時国会を開くよう求めても、政権側は無視するなど説明責任を果たそうとしない。

そして豊田真由子衆院議員(自民党を離党)の秘書に対する暴言や、稲田朋美防衛相による防衛省・自衛隊の政治利用発言である。

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017070302000124.html
続きます