「無痛分娩」で死亡や事故の報道が続いている。ここで今一度考えてみたいのが、なぜこのようなお産の方法が取られるようになったのか。お産の痛みの程度、
そして痛みのメカニズムについて、医師に聞いた。【BuzzFeed Japan / 朽木誠一郎】
お母さんや赤ちゃんが亡くなったり、障害が残ったりする事例が報道されている「無痛分娩」。麻酔を使ってお産(分娩)の痛みを和らげる方法だ。

ただし、無痛分娩の実施率は国によってさまざまだ。イギリスでは全分娩中の23%(2006年)、 ドイツでは全分娩中の18%(2002 - 3年)、
ノルウェーでは全分娩中の26%(2005年)など、欧米の中でも状況は大きく異なる。

一方、日本における2007年の調査では、無痛分娩率は全分娩中の2.6%と、明らかに低い。痛みを和らげることができるなら、そうした方が良さそうにも思えるが、
なぜ無痛分娩はあまり普及していないのだろうか。
そもそも、お産はどれくらい「痛い」? 医師に聞く「痛みの正体」

陣痛の場所と強さをイラストで説明したもの。
BuzzFeed Newsは日本産科麻酔学会の幹事で同学会が作成した無痛分娩Q&Aを担当した、北里大学医学部新世紀医療開発センター周生期麻酔・蘇生学准教授の加藤里絵医師を取材した。

お産(分娩)は「鼻の穴からスイカが出てくるよう」と表現されることがある。狭いところから大きなものが出てくるという意味では、的を射ている。しかし、
その痛みは、出産を経験していない女性、経験できない男性には想像しにくい。

そもそも、お産はどれくらい痛いのか。加藤医師は「陣痛が始まったばかりの頃の痛みは比較的軽い」と説明する。

「この頃は“生理痛のような痛み”または“お腹をくだしているときのような痛み”と感じるお母さんが多いです」

お産が進み、子宮の出口が半分くらい開いてくると、「痛みは急に強くなり、痛みを感じる範囲も広がる」と加藤医師。

「そして、子宮の出口が完全に開く頃には、へその下から腰全体、外陰部にかけてがとても強く痛むようになります。このときの痛みを“腰が砕かれそう”というお母さんもいます」

お産が進行するにつれて、痛みは外陰部から肛門の周りで特に強くなり、生まれる間際にピークに達する。「お母さんによっては、このときの痛みを“すごく強い力で引っ張られる
”“焼けつくよう”と表現します」(加藤医師)

また、新生児が妊婦の体から出てくることにより、「会陰(外陰部と肛門の間の部分)が裂けて痛みを感じることもある」そうだ。

ただし、これらはあくまでも事例であり、痛みの感じ方は一人ひとり違う。そのため、出産前にお産の痛みの強さを予測することは難しいという。

「とはいえ、お産の痛みは、がんによる痛みや関節痛など、とても強い痛みとして知られている痛みよりも、
さらに強いとする研究結果もあります。お産が少なからず痛みを伴うもの、ということは事実です」
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170627-00010003-bfj-soci