何をやっても安倍政権の支持率が下がらないのはなぜなのだろうか。

 濫用の危険性を孕んだ共謀罪法案を委員会採決を省略したまま強行採決したかと思えば、
「存在が確認できない」として頑なに再調査を拒んでいた「総理のご意向」文書も、一転して「あった」へと素早い変わり身を見せたまま逃げ切りを図ろうとするなど
、かなり強引な政権運営が続く安倍政権。ところがこの政権が、既に秘密保護法、安保法制、武器輸出三原則の緩和等々
、政権がいくつ飛んでもおかしくないような国民の間に根強い反対がある難しい政策課題を次々とクリアし、危ういスキャンダルネタも難なく乗り越え、その支持率は常に50%前後の高値安定を続けている。

 確かにライバル民進党の長期低迷という特殊事情もあろうが、なかなかそれだけでは説明がつかないほど、政権の支持基盤は盤石に見える。
第二次安倍政権がマスメディアに対して度々介入する姿勢を見せてきたことは、この番組でも何度か問題にしてきたが、それは自民党の新しい広報戦略に基づくメディア対策を
着実に実行しているに過ぎないと西田氏は語る。

 支持率の長期低落傾向に危機感を抱いた自民党は、1990年代末頃から企業型のマーケッティングやパブリック・リレーションズ(PR)のノウハウを取り入れた企業型広報戦略の導入を進め、
2000年代に入ると、その対象をマスメディアやインターネット対策にまで拡大させてきた。

 特にマスメディア対策は、個々の記者との長期の信頼関係をベースとする従来の「慣れ親しみ」戦略と訣別し、徐々に「対立とコントロール」
を基軸とする新たな強面(こわもて)戦略へと移行してきた。その集大成が2012年の第二次安倍政権の発足とともに始まった、対決的なメディアとは対立し、
すり寄ってくるメディアにはご褒美を与えるアメとムチのメディア対策だった。

 マスメディアの影響力が相対的に低下する一方で、若年世代はネット、とりわけSNSから情報を得る機会が増えているが、自民党の企業型広報戦略はネット対策も網羅している
。西田氏によると、自民党は「T2ルーム」と呼ばれる、ネット対策チームを党内に発足させ、ツイッターの監視や候補者のSNSアカウントの監視、2ちゃんねるの監視など
を継続的に行うなどのネット対策も継続的に行っているという。

 こうしたマスメディア・インターネット対策も含め、自民党の企業型広報戦略は、企業の広報担当者が聞けばごく当たり前のことばかりで、
言うなれば企業広報の初歩中の初歩を実行しているに過ぎないものだという。しかし、ライバル政党がその「初歩中の初歩」さえできていない上に、
マスメディアが「政治のメディア戦略」に対抗する「メディアの政治戦略」を持ち合わせていなかったために、これが予想以上の成果をあげている可能性が高いのだという。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170617-00010000-videonewsv-pol