政治資金の公私混同問題などをめぐって2016年6月に辞任してから1年、舛添要一・前都知事は当時の批判に何を思うのか。
新刊『都知事失格』が話題の舛添氏が、当時の状況を綴った。

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 6月14日、公明党、共産党、民進党など6会派が知事不信任案を提出した。ここで辞任したら、後任知事が任期をまっとうした場合、
次の都知事選が開かれるのは4年後。東京五輪の最中だ。辞任するにしても、リオ五輪が終わる9月まで待ってほしい、と。
だが、マスコミからはこう浴びせられた。

「そこまでして、リオに行きたいのか」

 もはや何を言っても無駄だった。翌15日朝、私は都議会議長宛の辞職願をしたためた。石もて追われるものは静かに去るしかない。
報道に前後して、政治資金の「公私混同」が指摘され、市民団体に告発された。

 これに関しては、検察の捜査に全面協力し、今年3月、不起訴処分となった。私や私の事務所がしっかりとした経理を実行して
いなかったことは、恥ずかしいことであり、お詫びしたい。

 さて、あれから1年を経て考えるのは、「パンとサーカス」という言葉である。

 古来、為政者たちが民衆を統治するための施策だ。豊かになった現代にパンは必要ないだろうが、サーカスに当たるのが、
週刊誌やワイドショーだろう。舛添バッシングは、立ち見が出るほどの最高のサーカスだったのではなかったか。

 かつて“一世を風靡した”舛添要一が、落ちぶれてライオンに喰われかけている。こんなに面白い見世物はない。都職員、都庁記者、
国会議員、都議、右翼、左翼、石原(慎太郎)シンパなど雑多な人たちがライオンをけしかけた。

 私はライオンに喰われた。マスコミに、そして彼らが作りだした世の“空気”に完敗したのだ。

※週刊ポスト2017年6月9日号
https://www.news-postseven.com/archives/20170602_559603.html