都から自治体に最初の提案が届いたのは25日。試算表は反応を探るように「○○○」が並び、数字が書かれていなかった。
その後、29日に自治体負担の欄にいきなり「350億円」と書かれたことで自治体側は
「議会に説明できない。本当に数字を示したければ、早くに伝えるべきだ。横暴だ」と突っぱねた。
都は5月末が至上命令だったため、自治体側は都が譲歩してくるとみていた。31日朝まで文言の調整が続き、
埼玉県の上田清司知事は会合で「自治体の欄を削除してくれたことは感謝したい」と述べた。
根負けした都幹部は疲れた表情で「内容よりスタートラインに立つことが大事」ともらした。
合意ありきの内容に大会関係者は「同床異夢」と評した。

 費用分担の協議は昨年3月に舛添要一都知事(当時)、遠藤利明五輪担当相(同)、組織委の森喜朗会長の3者で始まった。
6月には4県知事も顔を合わせ協力することで一致していた。
もともとは都の経費を削減するため、都外に会場を移したものの、受け入れる自治体にとっても地域振興のメリットがあり、
応分の負担をすることは承知していた。ところが、昨年8月に小池知事が就任。
都の都政改革本部が事前に相談もなく「仮設施設も県で一部負担」と提言したことで、
自治体側は想定していた以上の負担を強いられるのでは、と警戒した。
ボート会場の宮城県移転などの騒動も不信感を増幅した。

 ある知事は「もともとの原理原則の通り。最初から(小池知事が)そういってくれればよかった」とつぶやいた。
今回の合意は昨年6月に一致していた方向性に約1年がかりで戻ったに過ぎない。
森会長は「私は(大会準備が)約1年は遅れていると思う。ぜひ、加速して取り戻したい」と述べた。