http://diamond.jp/articles/-/129482

抜粋

内閣府の審議官が大学を所管する文科省に「官邸の最高レベルが言っている」、「総理の意向」と圧力をかけたとされていますが、それは本当なのでしょうか。

そもそも菅官房長官が5月18日の記者会見で発言しているように、総理の意向は“岩盤規制に風穴を空ける”ということだと考えられます。

加計学園問題について言えば、口蹄疫などの感染症の発生の拡大を考えると、家庭向けはともかく産業向けの獣医の数は足りないと考えられるのにもかかわらず、大学の獣医学部の新設は52年も認められませんでした。
獣医師の需給を所管する農水省とその族議員、その背後にいる日本獣医師会が反対してきたからです。獣医学部の新設認可は強固な岩盤規制だったのです。

ちなみに、私自身が内閣府の人たちに確認したところ、特区での他の規制改革に抵抗する省庁に対しても“岩盤規制に風穴を空ける”という文脈で同じような表現を使ったことはあるようです。


内閣府を含む数多くの関係者に取材を行ったところ、内閣府は、応募できる自治体・大学を限定することは特に考えていませんでした。
もともと特区はできるなら最初の段階から全国展開したい(=複数の地域で実現したい)と内閣府は考えているので、これはある意味で当然です。

ただ、規制改革を決めるときは、当然その規制を所管する農水省や自民党(=族議員)と協議しなければなりません。
調べたところ、その調整の過程で「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認める」という表現を入れるという形でまとまったのが真相です。
これなら半世紀にもわたって既得権益を守ってきた族議員も受け入れられるというギリギリのラインが、この表現になったのでしょう。

この表現を入れて方針が決まった後にパブリックコメントを募集したところ、日本獣医師会から「広域的に獣医学部が存在しない地域とは 1ヵ所、1校であることを明示しろ」
という意見が出され、最終的に獣医学部新設は1ヵ所に絞ることになったようです。

つまり、結果として加計学園だけが認められる形になったのは、総理や官邸、内閣府の作為や責任ではなく、獣医学部の新設にずっと反対して今回も大反対を繰り広げた、自民党の族議員と日本獣医師会の意向によってなのです。

続く