「共謀罪」の成立要件を改めた「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の国会審議が進む中、自らの体験をもとに廃案を訴える男性がいる。
戦後最大の人権侵害とされる「レッドパージ」をめぐる全国唯一の国家賠償請求訴訟(2013年上告棄却)の原告の一人、
大橋豊さん(87)=神戸市西区=で、近く最高裁に第4次再審請求を申し立てる。
大橋さんは暗い時代を振り返り、「レッドパージも共謀罪も捜査対象を決めるのは国家権力だ。
国は同じ過ちを繰り返すことになる」と危機感を募らせている。


67年前解雇の男性「家族も影響」危機感

 大橋さんは1950年8月、共産党員であることを理由に、当時の中央省庁の一つだった電気通信省神戸中央電報局を解雇された。
当時、党員として職場環境の改善を求めて組合活動をしていた。
上司からは「党員をやめたら首にせず、姫路への異動にとどめる」と迫られ、母からも泣いて「仕事をやめないでくれ」と頼まれた。
しかし、大橋さんは納得できず断った。

 稼ぎ頭を失った母と3人の妹弟は家や畑を売り払って離散。
母は絶望して尼寺に入り、中学を卒業したばかりの妹はバス会社の就職内定を取り消された。
後日、妹から送られてきたはがきには「兄ちゃんは好きなことをしているけど、家族はたいへんな思いをしてるよ」と書いてあった。
「つらかったね。この気持ちは経験した人間でないと分からない。共謀罪も同じ。捕まれば家族が巻き込まれる」



共謀罪:赤狩りと同じ 「テロリスト」国家の胸一つ
https://mainichi.jp/articles/20170517/k00/00m/040/160000c