体操ニッポンに新たな五輪王者が誕生した。男子個人総合で金メダルを獲得した岡慎之助選手(20)。初めての大舞台で驚くほどの急成長を遂げ、一気に頂点へと駆け上がった。

 5種目目の得意の平行棒で高得点をたたき出して首位に立つと、最後の鉄棒は足先までまっすぐ伸びた美しい演技を披露した。着地を決めると、スタンドで声援を送る日本の仲間に拳を突き出して応えた。

 優勝争いをする中国選手の演技を見守り、総合点でわずかに上回って金メダルが決まると、ともに戦った橋本大輝選手(22)らと抱き合って喜び、両手を何度も突き上げた。

 「ノーミスで演技できて良かった。大けがをして、多くの方がサポートしてくれた。感謝の気持ちを込めた演技ができた」と顔をほころばせた。

 金メダルに輝いた団体戦に続き、観客席で見守った父の泰正さん(44)は「堂々としていた。親も計り知れないぐらい、大舞台で成長している」と驚いた様子で話した。
 岡選手は2022年4月、跳馬の着地で右膝の前十字靱帯(じんたい)を完全断裂する大けがを負った。それ以来、泰正さんは跳馬の演技を見られなかったが、「今日は見ることができるぐらい安定感があった」と語った。

 名前は、泰正さんが読売巨人軍の阿部慎之助監督(45)のファンだったことにちなんでつけた。この日は、今まで息子の試合を観戦してきて初めて涙が出たといい、「息子も僕のスーパースターです」とほほえんだ。

 会場では、日の丸を掲げた日本のファンの姿もあった。団体戦も観戦したタイ在住の自営業、横井伸郎さん(42)は「二つも金メダルを獲得する瞬間に立ち会えるなんて幸せ。中国選手との接戦を制した姿にしびれた」と声を弾ませた。

読売新聞

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