0001湛然 ★
2024/04/13(土) 06:31:37.99ID:vSV5cu4q92024年04月11日
剣持 亜弥 ライター・編集者
日経クロストレンド ※「日経エンタテインメント!」2024年2月号の記事を再構成
https://xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00605/00059/
白い枠の中に収められた1羽の蝶(ちょう)。闇の中で光を浴びて、サファイアのような青く強い輝きを放っている。中南米に分布するモルフォチョウという蝶の仲間のなかでも、特に美しいとされる「レテノールモルフォ」の姿を表紙にあしらった湊かなえの新刊は、蝶に魅せられた榊史朗による「人間標本」というタイトルのリポートから始まる。
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『人間標本』
https://cdn-xtrend.nikkei.com/atcl/contents/18/00605/00059/01.jpg
蝶博士・榊史朗のリポート「人間標本」は、幼い頃の思い出から始まる。著名な画家だった父の手ほどきを受けて初めて蝶の標本を作った日のこと。史朗の人生に大きな影響を与える留美との出会い。その後、史朗は蝶の権威となり、家族をもうける。最愛の息子・イタルは、祖父の才能を受け継ぎ、素晴らしい絵を描くようになっていた。そんな折、留美から1枚の招待状が届き――。表紙を開くと現れる6人の少年の、美しく残酷な姿に誘われて迷い込む、禁断のミステリー。
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「この蝶の翅(はね)の色は、翅そのものが青い光を放っているのではないんです。翅についている鱗粉(りんぷん)に青い光の波長を拾う仕組みがあって、青に“見えている”だけ。光がなければ、色は見えないんですね。一方で、翅の裏側はすごく地味な色味で、目玉のような、あるいは落ち葉のような模様がついているんです。表と裏でまったく印象が異なる――それは、人間にも共通するところがあるな、と」
体内に毒を持つミイロタテハ、翅の表が地味で裏が派手なアカネシロチョウ、腹部の先端からメスを引きつけるフェロモンを分泌するオオゴマダラ、擬態されるマエモンジャコウアゲハ……。蝶が持つ多様な特徴が登場人物の行動と妖しくリンクしていく。
「実はもともと蝶に興味があったわけではなくて。私は趣味で登山をするのですが、山で蝶を見かけてもアゲハかな? モンシロチョウかな? くらいの(笑)。今回は『人間標本』というアイデアがまずあって、標本といえば蝶だよね、ということで調べ始めたんです。そうしたらすごく面白くて。しかも、ミステリーととても相性がいい。なかでも蝶の視覚に関する話には強く興味を引かれました。例えばモンシロチョウ。人間の目には、オスもメスも白に見えますが、モンシロチョウは紫外線を見ることができるので、翅に紫外色が入っているオスは赤黒く、入っていないメスは白く見えているそうなんです。遠くからでもオスとメスがはっきり判別できているんですね」
蝶の目を通せば、モンシロチョウ=白、ではなかった。
「蝶と人間だけではなく、人間同士でもそうですよね。自分の目で見えている世界が、他の存在にも同じように見えているとは限らない。今回、蝶という自分にとって未知の世界を調べて書き上げた小説は、くしくもデビュー作『告白』と同じメッセージを持つ作品になりました。挑んで、たどり着いたのは“原点”だったんです」
■全国でのサイン会がきっかけで
デビュー15周年記念作品として書き下ろされ、2023年12月に刊行された本作。長編小説としては2年半ぶりとなる新作で、まさに待望の1冊となったが、「6月の時点で4分の1ほどしか書けてなかったんです」と苦笑する。
(※以下略、全文は引用元サイトをご覧ください。)