フジテレビの日枝が編成局長から会長にまで出世出来たのもアラレちゃんのおかげ。

■「ジャンプ」アニメ化の壁を破った、歴史的作品

「ジャンプ」の歴史のなかで、アニメ化が行われていない時期があります。
1973年に『侍ジャイアンツ』がアニメ化されてから、実に7年半の間、
空白期間があるのです。それは「週刊少年ジャンプ」の3代目編集長
西村繁男氏がアニメ化に消極的だったためでした。

しかし人気のある原作をアニメ化したいと考えるのは、製作側の常でもあります。
人気の高い「ジャンプ」作品をアニメ化したいと考える個人や組織は当然存在
していましたが、原作サイドの許諾を得られずとん挫していました。その壁を
打ち破ったのが、鳥山明先生の『Dr.スランプ』だったのです。

『Dr.スランプ』のアニメ化は当初テレビ朝日が東映動画に企画を要請する形で
スタートしましたが、原作サイドの了承を得られずに断念することとなりました。
しかし東映動画がフジテレビに企画を持ち込んだところ、当時フジテレビ編成局長、
後に代表取締役社長・会長を歴任する日枝久氏が熱心にジャンプ編集部へのオファー
を続けたため、集英社の経営陣が集英社とフジテレビ全体の問題として西村氏を
説得し、アニメ化を許諾することになりました。

結果、『Dr.スランプ アラレちゃん』は空前の大ヒット。平均視聴率22.7%は
「ジャンプ」アニメ歴代1位の視聴率であり、今なお破られてはいません。
おそらく永久に破られることはないでしょう。関連商品の版権収入も莫大な
ものとなり、集英社にも大きな利益をもたらしました。

『アラレちゃん』の終了後は『ドラゴンボール』、その次は『ワンピース』と、
「ジャンプ」アニメの人気長寿作品が生み出された背景には、断られながらも
熱心なオファーにより集英社の経営陣を動かしたフジテレビの熱意があったのです。